次のお稽古のときは、母のところからまわってきた木綿の薩摩絣(さつまがすり)を着ていった。といっても以前に着た笹柄の紬(つむぎ)同様、お金を出した私のところに戻ってきたものである。この着物もあまり好きではないので、お稽古用になった。

帯は京紅型(きょうびんがた)の九寸帯にした。徒然棚のお稽古の二回目だが、お釜は相変わらず天井からぶら下がっている。床の間のお軸は先代の家元の書で「花始開」と書いてあるのだと、師匠が教えてくださった。「今日」の銘が入っていた。

お花はバラの新種で、薄緑色でまるで芍薬のように花びらがたくさんついている。薄紙のような繊細な花びらが美しかった。

 

私は最初からお点前の段取りを忘れたうえに、やはり右手と左手の鉄則が守れず、そこに集中すると、棗を取り出すときに、右側の襖から開けようとして、師匠から、

「あら?」

と声がかかる始末である。頭の中ではわかっているはずなのに、どうして体が思うように動いてくれないのかと腹立たしい。まあ年齢的にいって、どこかの配線が切れているのだろうが、もうちょっと何とかなって欲しいものだ。

そのうえやはり着物だと立ち座りがうまくできず、もっと下半身にゆとりをもたせた着付けができないといけないのがよくわかった。