女性の権利獲得や地位向上のために尽力した人物を何本か撮ったし、また知的障がい者をテーマにした映画を撮ろうと思ったのが、今回の新作です。

時代はよくなりましたよ。福祉も変わってきたと思う。長女が小さいころは、障がい者の子どもが生まれると経済的にも困窮したし、後ろ指を指されるし、変な勧誘も受けるし、将来への不安で一家心中する家族も少なくなかった。

そんなとき、美濃部亮吉都知事が「死なないでください」というメッセージとともに、障がい者の生活支援や施設づくりを進めていきました。欧米の福祉政策の影響もあっただろうけど、自治体や制度を動かし、日本の福祉を確かに前進させたのは、なにより当事者家族の声だったと思いますよ。

長女は今62歳。障がい者施設で暮らし、障害年金ももらっています。だからなんとか生活ができている。

今日も、庶民の生活を知らない人たちが政治をやっていますよ。子ども一人育てるのに、今は3000万~4000万円はかかるっていうんだから大変な金額じゃない。

若い人は生活が苦しくて子どもを産むのもためらっているのに、政治家はパーティー券で私腹を肥やしたり、めちゃくちゃでしょう。おかしいと思ったことは、声を上げないと。それを恥ずかしがったら世の中は変わりませんよ。

私がこの年齢まで映画をつくる原動力は、「怒り」です。世の中が多少よくなってきたからって、命を奪ったり、傷つけたり、差別したりする社会は変わっていないから。だからこの怒りが続く限り、映画をまた撮らなきゃいけないんでしょうね。(笑)


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