余命宣告を受けた当時、「もはや助からないのならば、残りの人生あと1年を、どう充実させようか」と考えたそうで――(撮影:千田容子)
国立がん研究センターの調査によると、2021年にがんで死亡した人は38万1,505人にのぼるそうです。三大疾病の一つである「がん」ですが、俳優の小倉一郎さんもまた、肺がんの「ステージ4」と診断されました。1度は余命宣告されるも、見事復帰を果たした小倉さん。余命宣告を受けた当時、「もはや助からないのならば、残りの人生あと1年を、どう充実させようか」と考えたそうで――。

いきなりの余命宣告

朝から薄い雲が広がって冷え込んだ3月4日、昼前。

レントゲン等の検査結果を聞くために、妻と坂本マネージャーと3人で××病院に向かいました。診察予約は午後1時半。まだ時間に余裕があります。

途中、「腹が減っては戦(いくさ)はできぬ」とばかりにステーキチェーン店へ立ち寄り、ランチをしました。今さらジタバタしたって、もう結果は決まっています。僕は迷わず200グラムのサーロインを注文し、ペロリと平らげました。

ずっと続く背中の痛みには参っていましたが、食欲は衰えていなかった。

既に緊張している2人よりも、僕のほうが元気だったかもしれません。

予約時刻の30分以上前に病院に到着し、受付を済ますと、年季が入った待合室のベンチに3人揃って腰掛けました。くすんだグレーの壁には、コロナの感染対策を啓発する色褪せたポスター。診察の順番が表示される電光掲示板の整理番号だけが妙に浮き上がって見えます。

どうにも気分が滅入ってイケナイ……。

周囲を見渡せば、僕たちよりずっと長く待っておられる方も大勢いて、中には明らかに具合の悪そうな患者さんの姿も。みんな、あきらめたような表情でうつむいたり、スマホをいじったり、寝ていたりして時をやり過ごしています。

予約をしても長時間待たされるのは大病院の常。ご多分に漏れず、僕の順番もなかなか巡ってきません。

やっと名前が呼ばれた時は、予約時刻から1時間以上過ぎていました。