もはや助からないのならば

さらにドクターは、「ご家族に直接、今回の診断結果を伝えたい」と、言葉を継ぎました。

この場に同席しているまきは僕の妻です。大切な、大事な家族です。なのに、血のつながっている親族にも告知しなければならない規則らしく、一歩も譲りません。

僕には元の妻との間に三女一男の4人の子供がおり、全員既に巣立って孫もいます。「子供たちには僕が話しますから」と断っても「いや、そういうわけにはいかないから」と聞き入れてくれない。

さらに耳を疑ったのは、「確定診断のために、入院して胸に針を刺して行う『針生検』を受けてもらいます」という言葉です。

正式にがんと診断するために、患部のある肺に針を刺して、病理検査するのだと。もうレントゲン画像でわかっているのに、なんでわざわざ入院してまで再確認しなきゃいけないんだ? 順番が違うじゃないか?

しかし、「NO」と言うのも気力・体力が必要です。僕は、いったんすべてを受け入れることにしました。

(撮影:千田容子)

いや、「受け入れる」というより「あきらめる」のほうが合っていたかもしれません。どうせ死ぬんだから、と。