あくまでも都
ただし、彼女の視点の先は、あくまでも都なのであった。
初雪の歌でも、実際に目にしている日野岳ではなく、都の小塩山(現京都市西京区大原野)が脳裡に浮かぶのであった。
皆が積もった雪(「いとむつかしき雪〈うっとうしくうんざりする雪〉」と記述している)を山のようにして国府の人々がそこに登り、紫式部を呼んだ際にも、
ふるさとに かへるの山の それならば 心やゆくと ゆきも見てまし
(故郷の都へ帰るという名のあの鹿蒜<かえる>山の雪の山ならば、気が晴れるかと出かけて行って見もしましょうが)
と答えるのであった。
なお、鹿蒜山は越前国敦賀郡にあった山で、ここを越えて敦賀湾東岸の杉津に到るのである。