再び伊勢へ

斎宮が伊勢で死去したのは斎王制度始まって以来のことで、宮廷では大きな騒ぎになりました。

写真提供:(C)2024映画「陰陽師0」製作委員会/『陰陽師0』4月19日(金)全国ロードショー(配給:ワーナー・ブラザース映画)

斎宮は天皇と伊勢神宮を取り持つ役目。それが死という最悪のケガレに襲われたのですから、伊勢神宮の神、天照大神の怒りに触れたと信じられ、すぐに次の斎宮を、慎重に選ぶ必要がありました。

こうして規子内親王に白羽の矢が立ったのです。規子27歳。天皇の異母姉が斎宮になるというのは異例のことで、そこには斎宮女御の娘だったからという選択肢が働いたと考えられます。

まさに異常状態下。そして徽子はある決断をしていました。

私も伊勢に行く。

彼女は、嵯峨の野宮(斎王が潔斎する仮宮)に同行しています。彼女に関わる歌人たちも野宮を訪れ、歌会を催す華やかな日もあったようです。

そして規子内親王の群行(斎王が伊勢に赴任すること)に合わせて、徽子は「旅を控えよ」という円融天皇の命令を無視して再び伊勢への旅路についたのです。叛逆と取られかねない選択でした。