内閣府男女共同参画局が令和3年に発表した「結婚と家族をめぐる基礎データ」によると、婚姻件数に占める再婚件数の割合は、1970年代以降上昇傾向で、近年では約4件に1件の割合で再婚とのこと。パートナーと支え合う人生を望む人もいる一方で、ちょっとした同情やその場のノリで結んだ絆に、苦しめられることもあります。只見道子さん(仮名・北海道・パート・63歳)は、4年で別れたものの、元夫を支える生活が続いているそうで――(イラスト:宮下 和)
この人は路上生活まっしぐらだ
それもこれも、別れた男の面倒をうっかり見てしまったことから始まった。身から出た錆だ。こんな状態の男を今さら捨てられない。
16年前、私は途方に暮れていた。離婚した元夫が家に転がり込んできたのだ。そもそも、4年間の短い結婚生活に終止符を打ったのは、彼に「出ていけ」と言われたのがきっかけなのに……。
半年も経たないうちに「住むところに困っている」と泣きついてきた。理屈で言えば他人なのだから、面倒を見る必要はない。けれど理屈と感情は別物だった。
目の前にいるのは、仕事もなく、家もなく、金もなく、持っているのは古い自動車だけのうらぶれた中年男。履いているサンダルでさえ、大きな穴が開いていて、裸足同然だった。私が追い出すと、この人は路上生活まっしぐらかもしれない……。そう思うと、かわいそうで思わず手を差し伸べてしまったのだ。
一緒には住みたくなかったので、基本あちらは車中泊。たまに家に来て、私の作った食事を食べ、風呂に入る。
まずは定職に就いてもらわなければ。きちんとした服装を私が揃えて面接に送り出したところ、運よくタクシー会社に就職できた。その後も、仕事にスーツが要ると言えば紳士服店へ、革靴が要ると言えば靴店へ。全部私が買い与えていた。
数年後に自分でアパートを借りるまで、いや、借りてからも彼の生活を支え続けたのだ。