自分の決断を呪わずにいられない
私たちは夫婦に戻った。夫の病は難病のため、効く薬はない。それでも、医師が飲め、という薬をまじめに飲んだ。
すると、食欲が止まらない。みるみる体重が20キロ増えた。もはや以前の面影はない。性格も変わってしまった。それも薬の副作用の一つ。
本には「攻撃的になる」と、1行で済まされているのが腹立たしい。一緒にいる身になってみろ。いつも、相手が怒っているのだ。
彼の着ぐるみを着た別人がそこにいるようだった。薬のおかげで命を長らえたけれども、夫は死んだのと同じなのかもしれない。
それでも以前と同じように、週末は一緒に出掛けていたが、最近、夫が歩けなくなった。薬が大腿骨の骨頭をダメにしてしまったのだ。病名は「特発性大腿骨頭壊死症」。
これもまた、国の指定難病である。彼は、「俺、ふたつの難病持ちになった」と笑ったけれど、まったく自慢にならない。
来月、夫は人工関節に取り換える手術を受ける予定だ。でもその後、歩けるようになるかはまったくわからない。
歩けなくなった人に向かって、「お世話をするのはもうやめます」なんて言えるものか。あの時の自分の決断を呪わずにはいられない。