『天上の虹』は1983年に連載開始。その後描き下ろしに移り、2015年に完結した。天智天皇の娘として生まれ、天武天皇に嫁いだ鵜野讃良皇女(持統天皇)の激動の生涯を描く(図版提供◎里中プロダクション)

漫画のいいところは、物語に入り込みやすいことです。キャラクターの表情や仕草からストーリーを読み進めていく。まるで自分が物語に参加しているかのよう。しかも、主人公の敵役の内面でさえ、読者は読むことで理解できる。

『鉄腕アトム』でも、博士に言われるままに闘ってきた敵方のロボットが、博士の野望を知って悩むシーンがあります。私はその姿にぐっと感情移入していました。

でも日本人は、難解なもののほうが芸術として優れていると思いがちでしょう? 漫画は絵で展開され、内容が誰にでもわかりやすいというだけで、低俗だと大人たちは判断するわけです。読んだこともないのに決めつけるなんて横暴ですよね。

漫画は歴史の流れや人間社会のありようを学ぶための最高のバイブルなのに。このままでは大人たちによって漫画が滅ぼされてしまう。子どもながらに社会正義に燃える私は、漫画を守りたいと考えるようになりました。

学校では「女の人も働く時代だ」と言われた世代です。でも、当時女性が就ける仕事は限られていて、教師や看護師、薬剤師などしかない。将来のことを考えた時に、浮かんできたのが漫画家でした。

絵を描くのは得意だし、男性でも女性でも通じるようなペンネームにすれば、男女の枠を超えて、活躍できるのではないか――。