厚生労働省が行った「令和4年 国民生活基礎調査」によると、約46%もの人が「悩みやストレスを抱えている」と答えたそう。なかなか解決できない悩みは、「もうひとりの自分」が、心を守るために無意識に引き起こしているかもしれません。公認心理師・橋本翔太さんは、その心の防衛機能を「ナイト(騎士)くん」と名づけました。今回は、自著『わたしがわたしを助けに行こう ―自分を救う心理学―』より、つらい悩みに隠されたナイトくんの目的を解き明かします。
病気や問題が無意識に引き起こされてしまうのは、なぜ?
疾病利得とは、病気でいることで(問題を抱えていることで)、本人が得ているメリット(利得)、という意味です。
これは医療の現場で使われることが多い概念。厳密には「一次疾病利得」と「二次疾病利得」がありますが、ここでは割愛します。
病気でいることで何を得ているの?
病気にメリットなんかあるの?
と、思うかもしれませんね。
疾病利得のシンプルなたとえとして、こういう例があります。
病気でいたら、家族がいつもより優しくしてくれる。
学校や会社を堂々と休める。
病院の先生や看護師さんが注目してくれる。
……などです。
病気でいることで、このようないいこと(メリット)があると、なかなかよくならない、本来治ってもいい頃なのになぜか不定愁訴が続く……ということが起こる場合があります。
本人としても治したいのに、疾病という問題を抱えていた方が本人にとっては「何かしらのいいことがある」という状況です。
ただ、本人は無意識、無自覚の場合が多いです。