「はんなり」に美の集積を学ぶ

そういえば以前、瀬戸内寂聴さんに連れられて、祇園のお座敷で楽しい時間を持ったことがありました。祇園はまさに「はんなり」の世界。京焼の器に盛りつけられた美しい料理、芸妓さんの着物や所作、御抹茶の鮮やかな緑色と繊細な京菓子、屛風などのしつらい、灯籠に照らされた坪庭の陰影など、京都の華やかな美の集積という感じでした。

私はかねて、「人は保護色の生き物」と言っています。観るもの、着るもの、聴くもの、読むもの、すべてが美しいと、自ずとその人も美しく変化します。なにも贅沢を勧めているわけではありません。明るい色の上品な服を身につけ、上等な食器はお客様用にとっておくのではなく、普段から自分のために使う。そんなふうに生活を美で彩り、心を美で満たすのです。

美が身近にあれば、使う言葉や立ち居振る舞いも自ずと美しくなり、人にも思いやりを持てるようになります。それが、はんなりした素敵な人への道なのです。

●今月の書「なんなり」

 

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