イメージ(写真提供:写真AC)
脱毛というと、若い女性がするものと思っている人が多いかもしれない。ところが今、エステサロンや美容クリニックで行う脱毛が、50代、60代、70代にまで広がっているという。ムダ毛の悩みはいくつになっても尽きないとはいえ、なぜ年を重ねた今なのか? 体験者の心のうちを探ってみた。 (取材・文=丸山あかね)

剃毛時に腕を上げ続けるのもつらくなり

襟足の永久脱毛をしたという人もいる。艶やかな着物姿で待ち合わせの場所に現れたのは秋元美智子さん(51歳・会社員)。

「これからお茶のお稽古で……。もうすぐ京都のあるお寺で行われる大掛かりなお茶会で、お点前の亭主役を任されることになっているんです。1年半ほど前にお教室の先生から今回の大役の話をいただき、着物を新調するなどあれこれと準備を進めてきました。その一環として、襟足の永久脱毛をすることにしたのです」

ゆったりとした口調、整った面立ち、上品な立ち居振る舞いが印象的な秋元さん。そんな彼女が、にわかには信じがたい衝撃的な告白をはじめた。

「実は私、ものすごく毛深くて。特にうなじから背中にかけて体毛が密集しているんです。本当に恥ずかしいのですが、今も背中の産毛は渦を巻いています」

毛深さを深刻に悩みはじめたのは思春期の頃だったという。「毛の多い体を人に見られるのが嫌で、学生時代はずっと水泳の授業を見学し続けたほどです。茶道をはじめたのは高校2年のとき。初めてのお茶会の席で先輩に呼ばれ言われたのです。『襟足が汚い』と。その一言がトラウマになりました」

先輩の言葉に傷つきながら帰宅し、合わせ鏡で確認すると、確かに襟足が黒ずんで見えた。そこで恐る恐る安全カミソリをあてて、襟足の産毛というには量の多いムダ毛を剃ってみたのだという。

「慣れると意外に簡単。自分で処理できてしまうんですよ。でも、頻繁にしていると肌が荒れてしまい、かえって汚くなってしまって。年齢のせいもあるのでしょうか、近頃では毛を剃るために腕を上げ続けるのもつらくなってきました。腕が震えて、うっかり肌を傷つけてしまったことも。堂々とお点前をするために、私には永久脱毛が必要だったんです。料金は1万5000円ほど。こんなに安くできるなら、もっと早くやればよかったと思っています」