責任者になり、「無駄に思えたもの」の意味に気がつく
就職活動とその後の仕事そのものは、やってもやらなくても同じような無駄な仕事、事務作業だとばかり感じました。
日本の就活では学生にエントリーシートや面接で膨大な作業をさせるわりに、そこで出てくる回答の多くが本音ではないことを企業側もわかっています。
多くの人が遊んでばかりだった学生生活から、瞬時に「就活モード」を取り繕(つくろ)う日本人には、ある意味で感心させられました。
しかし、今になって、無駄に思えたものにも実は意味があるのだと徐々に気づいてきました。私自身が、大使館のスタッフに「やっても無駄だ」と思われても仕方ないような仕事を振る場面が出てきたのです。
ひょっとしたらやらないほうが労力もかからず、良いかもしれない。しかし無駄だと明確に言い切ることができず、むしろそれをやりきることによって成果に微妙な差が生まれる、という作業です。
仕事の責任者になったことによって、当時は無駄じゃないかと感じていた就活での複雑な作業やキッコーマンでの仕事を肯定的に見ることができるようになりました。これには自分でも驚いています。
とはいえ、大抵の場合、企業の中途採用試験やアルバイトの採用ではもっと応募者も採用者側もフランクで、試験や面接の内容も簡素なのですから、新卒採用もあそこまで儀式的である必然性はないでしょう。
もう少しスピーディに、応募者にとっても採用する側にとっても少ない負担でマッチングするやり方があるはずです。
※本稿は、『日本再発見』(星海社)の一部を再編集したものです。
『日本再発見』(著:ティムラズ・レジャバ/星海社)
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日本文化への深い洞察で人気を集めるティムラズ・レジャバ駐日ジョージア大使が、日本への思いの丈を語り尽くしました。
日本人は当たり前だと思っている、しかし世界から見るとユニークでおもしろい「日本らしさ」を再発見できる一冊です。