尚弥は天才か

尚は天才なのでしょうか。

『努力は天才に勝る!』 (著:井上真吾/講談社現代新書)

答えは「否」です。謙遜や嫌味ではなく、尚は決して天才ではありません。センスのあるなし、とよく言いますが、まるでない、とは言いませんが、「普通よりやや上」といったところです。

尚がそれなりに運動神経に恵まれていることは明らかでした。運動会のリレーの選手に選ばれたり、マラソン大会でも上位に食い込んでいました。球技もそれなりにうまいようで、友だちとサッカーをしていても活躍できたようです。

とはいえ、2015年夏の甲子園で活躍した早稲田実業高校の清宮幸太郎くんのような身体能力に恵まれたタイプではありませんでした。

つまり尚にはずば抜けた資質があったわけではないのです。積み重ねた努力によって今の尚があるのです。

尚が中学生のころから、それまではジムごとに非公式に行われていたキッズボクシングが「U−15」と名づけられ、後楽園ホールで全国大会が開催されるように体制が整えられつつありました。キッズボクシングの黎明期でした。

昔も今もボクシングジムに通っているお子さんはいます。ただ練習の成果を披露できる機会に乏しかった。ライバルとなるような同世代の子どもたちとの交流も少なく、競い合うような関係にまで至ることはありませんでした。

当時、ボクシングは高校の部活動ではじめて全国的な大会が設置されていました。野球やサッカーのように中学での全国大会はありませんでしたし、ましてや小学生が参加できるような大会はありませんでした。プロの試合の前座のエキジビションとしてスパーリングを披露する程度で、各ジムで個別に研鑽するしかなかったのです。