先輩猫に玄関まで追いつめられ教育的指導をうける犬(写真提供:麻生圭子さん)

50歳くらいのとき聴覚障害6級と診断され、身体障害者となりました。障害者手帳をもらったときはほっとしました。運転免許証のような、資格を手にしたというか。もう聴者でなくてもいいんだと思えたからです。

65歳になり、障害者手帳は6級から3級に飛び級。自分が思うより、進行していました。多岐にわたる精密検査の結果、人工内耳を勧められました。

最初はいいです、とお断りしたんです。手術が怖いのではなく、聴こえなくてもいい、これも私の人生、個性と達観していたからです。筆談やスマホの音声文字変換アプリを使えば、日常生活に困ることもありません。

ところがあるとき、わが家の猫が助けを求めて大声を出しているのに、それが聴こえず半日、放置してしまうという事態に。幸い帰宅した夫が無事救出しましたが、ショックでした。猫の声が聴こえる飼い主に戻ろう、人工内耳を入れようと決心しました。