時事問題から身のまわりのこと、『婦人公論』本誌記事への感想など、愛読者からのお手紙を紹介する「読者のひろば」。たくさんの記事が掲載される婦人公論のなかでも、人気の高いコーナーの一つです。今回ご紹介するのは香川県の80代の方からのお便り。昼下がりにウトウト居眠りをしたとき、初恋の彼とコーヒーを飲んでいる夢を見たその理由は――。
60年前にタイムスリップ
私は80歳。娘ががんで亡くなってからは一人になり、ケアハウスに入居している。新規の入居者から挨拶代わりにと、札幌農学校のクッキーをいただいて、初恋の人を思い出した。彼は北海道大学の出身で、酔うとよく「都ぞ弥生の雲紫に」と唄っていたものだ。
それから自分の部屋で、昼下がりにウトウトと居眠りをしていると、60年前にタイムスリップした。初恋の彼と2人でコーヒーを飲んでいる。突如彼が中座して、帰ってこない。ふられたのかな? 夢のなかで、さめざめと泣いている私……。
どうしてこんな夢を見たのか思い当たった。ケアハウスに初恋の人の面影がある男性がいるからだ。ジーンズに白シャツで年齢を感じさせず、この年でドキドキしてしまう自分に驚く。
髪を整え、うすいお化粧をして、かわいいおばあさんを演出。けれどただ、遠くから見ているだけで、目も合わせられない。まるで高校生に戻ったよう! この恋の結末はいかに。認知症になって、忘れてしまうかもしれないけれど。