大石静さんが脚本を手掛け、『源氏物語』の作者・紫式部(演:吉高由里子さん)の生涯を描くNHK大河ドラマ『光る君へ』(総合、日曜午後8時ほか)。ドラマの放映をきっかけとして、平安時代にあらためて注目が集まっています。そこで今回、ドラマにも登場する「赤染衛門」について、『謎の平安前期』の著者で日本史学者の榎村寛之さんに解説をしてもらいました。
「歌の先生」赤染衛門
平安時代の女流歌人は皆かなり個性的なのですが、特に異彩を放っている人に赤染衛門がいます。『光る君へ』では元宝塚歌劇トップスター、凰稀かなめさんが演じているあの歌の先生です。
『光る君へ』のホームページによれば、「一条天皇の中宮となる娘の藤原彰子にも仕えた」とありますので、これからまた出番が増えるのかもしれません。
そもそもですが、赤染衛門が女性の名前だと知って驚く人が多いようです。なるほど石川五右衛門の親戚のようにも読めるのかも。
平安時代の女房の呼び名が、夫や父など関係者の官職名に由来する(今の会社組織でいえば、経理部長の娘が経理さんと呼ばれる感じ)のはご存じの方も多いかと思います。
それが武官であった場合、衛門とか兵衛といった武骨な官職名で呼ばれるわけで、たとえば『紫式部日記』にも「大左衛門の君」という女房が出てきます。