赤染衛門の父は誰か

ところで、『袋草紙』という平安後期に作られた歌学書(和歌の学問書)に、彼女の父は赤染時用ではなく、平兼盛かもしれないという話が載っています。

平兼盛は平安中期の有名歌人で、赤染衛門の母は彼と最初結婚していて、別れた後に時用と再婚し、彼女が産まれたため、兼盛が父親は私だと、親権訴訟を起こしたというのです。

なんだかゴシップめいた話ですが、話の出所は『江記』だとしています。

『江記』とは12世紀の大学者で、学問の力で正二位権中納言の地位まで上った大江匡房の日記で、彼は赤染衛門の曾孫なのです。

そして赤染衛門はこの曾孫の誕生を喜ぶ歌を残している位長生きだったので、この話は、匡房やその父が、彼女から直接聞いた話だと考えられます。