しばらく考えている。

「誰かのためにそういう気持ちになれるっていうのは、まぁ人としては素晴らしいことだけどな。でも、ヤクザなんていう連中にはかかわり合いにならないのが絶対にいいってことは、わかるよな?」

「わかってます」

 いや、経験がないから本当の意味ではわからないけれど、理解はできます。

「もしも、俺が西森さんのことを教えてお前が会いに行ったりなんかして、そのせいでお前がとんでもないことになってしまったら俺がものすごい後悔をするってことも理解できるよな。三四郎は賢いものな」

 そうだった。

「わかります」

「でも、まぁ名前を教えちゃったからな。その気になれば住所も電話番号も調べられるだろうし、ある意味では有名人だからなぁ。三四郎が勝手に調べちまって会いに行くこともできるんだよな」

 そうなりますね。

 三公さんが、しょうがないか、って言った。

「三日待てよ」

「三日?」

「明日明後日は土日だ。今日もまだ夕方だ。たぶん、西森さんはこの週末二、三日の内に来るよ。そのときに俺が間に入るよ」

「間に入る?」

「アルバイトとはいえ、俺はお前の雇用主。そしてここは全て俺が管理してる場所。そこで俺が立ち会ったことなら、俺が責任が持てる。だから、ここで西森さんに話してみろ。ここで俺も入って話をする分にはお前に何か不都合なことなんか起こらないし、西森さんも起こさせないよ」

 ここで。〈三公〉バッティングセンターで。

「でも、それじゃあ三公さんに」

 迷惑が掛かってしまうかもしれない。

 そう言ったら、三公さんが肩を竦めて見せた。

「今言ったばかりだろ。ここで起こることは全部俺が責任を持てる。持てるからやっている。だから、まずは全部俺に話してみろ。その大事な人のことも。悪いようにはしないし、もちろん秘密は守る」