疲労は病気につながるサインである

では、私たちはなぜ疲れるのでしょうか。

私たちは酸素を吸って生きていますが、酸素を吸うことで生じる、よくない副産物もあります。それが酸素ラジカルという活性酸素です。

活性酸素は細胞を傷つけます。傷ついた細胞を修復するためには修復エネルギーが必要になります。その修復エネルギーは何かというと、ATP(アデノシン三リン酸)です。

これはミトコンドリアでつくられ、われわれの体を動かす原動力となるガソリンのようなもので、ATPが潤沢にあれば、傷ついた細胞をすぐ修復してもとの状態に戻せます。

しかし体内のATPを使い切って枯渇してしまうと、修復ができない状態になってしまいます。そうするとさまざまな悪い影響が体の中に生じてきます。その1つが疲労です。

疲労を放っておくと、重大な病気を招く可能性もあります。 「たかが疲労」ではありません。疲労は病気につながる重要なサインなのです。

疲労の疾病発生経路(『休養学』より)

人間の体には大きく分けて、神経系と内分泌系と免疫系という3つの制御システムがあります。この3つが互いに連絡をとりあい、ゆらゆらとバランスをとりながら生活しています。

仮に自律神経のバランスを崩しても、ほかの2つがカバーして時間稼ぎをしているあいだにゆっくり休むことができれば、自律神経の乱れも通常どおりに回復します。

このようにしていつもの状態を保つはたらきを、「ホメオスタシス(恒常性)」といいます。ですから疲労の初期段階で休めば、何ら問題ありません。しかし、休まずにいると今度はなかなか回復できなくなります。