歌手、俳優の美輪明宏さんがみなさんの心を照らす、とっておきのメッセージと書をお贈りする『婦人公論』に好評連載中「美輪明宏のごきげんレッスン」。
6月号の書は「てふてふ」です。

「てふてふ」はとても軽やか

童謡の「ちょうちょう」は、みなさんよくご存じですね。小さいころに歌った人も多いのではないでしょうか。明治時代に『小学唱歌集』に掲載されたそうですから、ずいぶん前から歌われていたことになります。

私の子供時代は、「ちょうちょう」は「てふてふ」と書かれていました。現代の仮名遣いで書くと、なんだかベタッと糊がついているような気がしますが、「てふてふ」はとても軽やかです。字そのものが、まるで蝶がひらひら飛んでいるようです。

旧仮名遣いが今の仮名遣いに切り替わったのは、戦後間もない昭和21年。なんでもアメリカ政府から日本に派遣された教育使節団の勧告もあって、政府が表記の簡易化を決定した、と聞いています。言ってみれば外圧も影響して、それまでの伝統を捨てて、現代仮名遣いになったのです。