葛藤が生まれるのは当然

誰にだって不幸だと感じた時間はあるものだ。恥ずかしくてたまらない時間もあっただろう。

それでも一時的な平穏を求めてその不幸を否定してしまえば、自然治癒のチャンスを失い、ますます傷を腐らせることになる。

傷に蓋をしたところで何の役にも立たない。

だから、もしあなたが不幸な過去に囚われて苦しんでいるのなら、これからは恐れることなく勇気を出すべきだ。

過去の不幸を認めて傷を直視してこそ、それを治す力も得られるからである。

また、誰もが夢みる、おいしい夕食を囲んで仲むつまじく会話を交わす温かな一家団欒も、それぞれが自分のことで忙しい現実の家庭ではなかなか実現するのが難しいものだ。

それに温かな家庭とは、根本的に「けんかをしない家族」ではなく、「けんかをしてもすぐに仲直りができる家族」である。

人が交わって暮らしていれば、たとえ家族間でも葛藤が生まれるのは当然だ。

問題解決のためには声を荒らげることもあれば、意見の対立でけんかになることもある。

だが温かな家庭は葛藤を恐れない。葛藤が生じても、どうにかしてそれを解決するべく互いに努力できると信じているからだ。

反対に、けんかがない家は「温かな家庭」ではなく、「お互いに葛藤から目をそむけている家庭」という可能性がある。

そういう家のベースにあるのは、平和ではなく息も詰まるような沈黙だけだ。

そういうわけで、まずは「温かな家庭」に対する誤った幻想から抜け出すことだ。

世の中には、問題や葛藤がない家など、どこにもないのだから。

※本稿は、『「大人」を解放する30歳からの心理学』(CCCメディアハウス)の一部を再編集したものです。


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