問題の本質を把握して解決

ところが、なんとその傷が心の中で腐り始めた。

その結果、彼は常に得体の知れない緊張感と漠然とした不安に駆られ、時折湧き上がる他者への怒りをコントロールできなくなった。

(写真提供:Photo AC)

蓋をしてあった傷が、事あるごとに外へ出ようとするようになったのだ。

ソンウさんの場合、孤独で不幸な幼少期を認めることは大きな苦痛であり悲しみだった。

だが私とのカウンセリングをとおして、満たされなかった幼少期を認めた彼は、ついに自分と両親の実情にきちんと目を向けられるようになった。

その後さらに、母自身も傷ついていたことに気がつくと、母に対して抱いていた得体の知れない心理的な負担や居たたまれなさからも抜け出すことに成功した。

蓋を開けて中の傷を観察し、問題の本質を把握して解決するための力を得たのである。

今の彼は毎週の実家帰りもしていない。母に愛されたかった過去と決別した彼は、手遅れでないことを祈りながら、その分の時間を妻との関係修復に充てている。