世間から「大丈夫?」と思われがちな生涯独身、フリーランス、40代の小林久乃さんが綴る“雑”で“脱力”系のゆるーいエッセイ。「人生、少しでもサボりたい」と常々考える小林さんの体験談の数々は、読んでいるうちに心も気持ちも軽くなるかもしれません。第26回は「とにかく凍らせれば何とかなる」です。
きっかけは親孝行
食事は数ある家事の中でも一番厄介だ。独身の身分でも毎度作って、食べて、片付けるのは面倒なのにこれを家族の人数分、日々こなしている人には頭が下がる。ただ食べなくては生きていけないし、毎日外食とウーバーイーツというのも気が引けてしまうし、経済的に成立しない。
このひとりごちた悩みを解消してくれたのが、冷凍保存食をまとめて作る作戦だった。
きっかけは2019年に親族の葬式で急遽、帰省したこと。実家への手土産を選ぶ暇もなかったので、当時は何も考えずに冷凍保存していたカレールーと、シチューを持参した。この2品はただ作りすぎたものを冷凍しただけだ。それを土産にする偽装親孝行も、今さらながらどうかと思う。
ただ実家の母は大層喜んだ。
「ジンジャーがいっぱい入っているカレーなの? なかなかお父さんが食べないから作れなくて。そういうのが一番美味しいよね!」
え? こんなに喜んでくれるの? それなら正月の帰省時にあくせく働いて作っている料理ももっと褒めてほしい。そんな子どもじみたことも思いつつ、時々、冷凍便で送るのもいいのかもしれない。これが冷凍保存食作りの開幕となった。