心臓に持病を抱えて
世界的な名医たちに手術していただいた寺尾の体には、特別な補助心臓の機械が入っています。だから心臓マッサージはできないのですが、心臓が止まってしまったとしても、補助心臓が機能すると言われていました。ただ、その日は主治医が海外にいたこともあり、かかりつけとは別の病院に搬送されたのです。
そもそも発作を起こして意識をなくしたのは、この時が初めてでした。まったく意識が戻らず、「肝臓にも原因があるのでは」と血液の透析を7回したところ、40日目にしてようやく戻ったのです。
でも、本人にはその自覚がまったくないんですね。「95時間、おじいさんと一緒に舟に乗っていて、迷ったあげく、やっとここに帰ってきたんだよ」などと言う。「それは、三途の川を見たということでは……」と思いつつ、とても口には出せませんでした。
しかも、「そのおじいさんは血縁ではなく、ここの病院の人だった」と言うので怪訝に思っていると、向かいの病室のおじいさんが亡くなったと知って。驚きましたね。
ただ、いつまた意識を失うかわかりません。「今のうちに会わせたい人を呼んでください」と言われて、1回に2人ずつ、5~10分ほどの面会を繰り返し、毎日20人くらいの親しい方が見舞ってくださいました。