熱意にほだされて結婚

半藤と初めて会ったのは、小学5年生頃。父の故郷、新潟県長岡市に疎開中、兄の友人の一人としてうちに遊びに来ていました。彼は空襲で焼け出され、長岡で暮らしていたんです。

戦後、社会人になった兄のところに遊びに来るようになり東京で再会。大学生の私はふわふわしていて、バスケットボール選手に憧れたり、いろいろな男の子とデートしてはすぐ飽きたり。

あの人は東大のボート部で活躍していましたがハンサムボーイではないし、5歳しか違わないのに、なんだかじいさんみたいな顔で惚れる対象じゃなかったの。(笑)

ところが彼は、「好きです」「結婚してください」と、懲りずに何度も言ってくるんです。しまいには「あなたの奴隷にしてください」なんてことまで言い出して(笑)。「ほんとかしら?」と思ったけど、女性に対してそこまでへりくだれる男の人は初めて。私はそんなふうに人を愛する感覚がわからなかったので、断り続けていました。

一つには、彼は離婚歴がありましたから、私が子持ちの男と結婚したら親が悲しむと思ったんです。姉はアメリカ人と結婚するなど、きょうだいみんな自由というか、親が願っていたのとは違う生き方をしていて。末っ子の私は、親を悲しませてはいけない、という気持ちが強かったのかもしれませんね。