草笛 『シカゴ』もニューヨークで観て、ぜひやりたいと思った作品。終演後に楽屋にうかがって、ミュージカル界の女王と言われていたチタ・リヴェラさんと親しくなったの。
市村 チタとは、のちに僕もチタちくなったよ。(笑)
草笛 19歳ではじめてミュージカルに出合って以来、毎年ニューヨークに観に行っていたほど、一時期はミュージカル漬けの生活だったわね。ときどき、あのころの自分に戻りたいと思うことがある。とことん、ひたむきだった自分に。
市村 僕は小学校のころの自分に戻りたいけどね。
草笛 どうして?
市村 一番気楽な時期だったから(笑)。それに、遊ぶことに忙しかった。僕、忙しくしているのが性に合ってるんだよ。
草笛 でも、「あのころに戻りたい」なんて思う一方で、「いいえ、いまが大事」とも思うわけ。あなたもそうよ。いまやれることを一所懸命やらなきゃ。
市村 一所懸命やってるよ。毎日トレーニングしてるし、今日だって、草笛さんに会う前にヨガに行ってきたし。だって食って飲んで寝てるばっかじゃ、舞台には立てないでしょう。
草笛 何歳になっても、自分を磨き続ける。それはとっても尊いことね。
<後編につづく>
撮影:
天日恵美子
ヘアメイク:
中田マリ子(草笛さん)
森岡真紀(市村さん)
スタイリング:
清水恵子(アレンジメント K)(草笛さん)
TAKEFUMI KAWASAKI(市村さん)
草笛さん衣装協力:ドレス/アナザーアドレス(anotheraddress.jp、大丸松坂屋百貨店)、ジュエリー/オートジュエラー アキオ モリ(TEL 03・5524・0027)、靴/本人私物
出典=『婦人公論』2023年11月号
市村正規
俳優
1949年埼玉県生まれ。西村晃さんの付き人を経て、73年に劇団四季の「イエス・キリスト=スーパースター」でデビュー。劇団の看板スターとして活躍する。退団後は舞台、映画、ドラマなどに幅広く出演。2019年旭日小綬章受章
草笛光子
女優
1933年神奈川県生まれ。松竹歌劇団を経て女優デビュー。舞台、映画、テレビと幅広く活躍。芸術祭優秀賞、読売演劇大賞優秀女優賞、紀伊國屋演劇賞・個人賞ほか受賞多数。99年紫綬褒章、2005年旭日小綬章を受章。近年の出演作に、映画『老後の資金がありません!』、大河ドラマ『鎌倉殿の13人』など。近著にファッションブック『草笛光子90歳のクローゼット』