斉木が溜め息をついて言った。
「空き家問題ですよ。ご存じでしょう。持ち主のわからない空き家が問題になっているのを……」
「ああ……。荒れ放題の空き家が、処分することもできず放置されているらしいですな」
「この地域にもありましてね。それで、持ち主がわからないか原磯さんに問い合わせていたんです」
 阿岐本が原磯を見た。
「それで……?」
「ずいぶん古い物件で、登記簿を入手しても持ち主はわからなかったんだ」
 斉木が言った。
「それで、困り果てていたんですがね……」
 阿岐本は言った。
「ひょっとしたら、わかるかもしれません」
 斉木が聞き返した。
「え? どうやって……」
「西量寺へ行ってみるといい」
 原磯が言った。
「不動産屋でわからないものが、寺でわかるはずがないでしょう」
 阿岐本が言った。
「ダメ元で、今から行ってみましょう」
 阿岐本、日村、原磯、斉木の四人で西量寺を訪ねることになった。