終末期の医療の難しさ

小堀 僕は基本的には、医者は患者を生かすべきだと思っているんです。老人の終末期は、がんの末期患者とは違う難しさがあります。つまり、ターニングポイントの判断が難しい。

「生かす医療」から「死なせる医療」への転換、すなわち「ターニングポイント」、治癒の可能性をどこでどう見極めるのか。僕は臨床医としての経験が長かったからかもしれないけれど、やはり肺炎は肺炎として治すべきだと思います。

『死を受け入れること ―生と死をめぐる対話―』(著:養老孟司・小堀鴎一郎/祥伝社)

ある男性が、お母さんから「もしもの時は、何もしないで死なせてくれ」と言われているけれど、そうすると、自分は警察に尋問される羽目にならないのか、と言っていたのですが、息子の立場なら、それを医者に伝えればいいでしょう。医者が何もしないわけにはいかないんです。

死に至るプロセスは人それぞれです。死ぬ数日前から食べられなくなる人もいれば、その前日まで自分で手洗いに行って、お風呂に入れる人、ずっと意識不明でほとんど寝たきりの状態が1カ月ぐらい続く人……と本当に千差万別ですから。