「個人的な問題」とみなす姿勢を変える
人種に対する配慮も必要だ。
更年期と仕事に関するイギリス政府の報告によれば、ホットフラッシュを経験する女性は、アフリカ系アメリカ人で最も多く、次いでヒスパニック系、白人となっている(5)。
アフリカ系アメリカ人とヒスパニック系の女性は、白人女性以上に賃金格差に直面しているので、更年期の体調の変化で経済参加にさらに深刻な影響が出るなら、いっそうの支援が必要になるだろう。
更年期症状は、職場の環境によって悪化することもある。
具体的には、部屋が暑すぎる、または換気が悪い、水分補給をする休憩時間がない、休憩場所がない、人が多すぎる作業スペース、また動きが制限される制服や形式ばった会議などだ。
汗じみやホットフラッシュを隠すために要する感情労働、生理痛、生理が重いときの手当て、不眠といった問題は大きな負担になる。
先のイギリス政府の報告では「更年期の女性は、職場で周囲にいる人の理解を得られず冷たい扱いを受けているとたえず感じていて、これはジェンダー差別と年齢差別によるものだという。こうしたことを示す根拠もある」と述べている(6)。
また、「女性が、同僚や上司からばかにされ、ハラスメントを受け、非難されていることを裏づける根拠もある。このような扱いを受ける理由は、更年期の症状が原因である場合もあるが、単に、40歳以上の女性に対する『ヒステリック』『情緒不安定』『更年期っぽい』といった先入観による場合もある」としている(7)。
女性は更年期について職場でオープンに話をしない。話すと、男性より弱々しく能力がないと思われるのではないかと不安を感じているからだ。
そうした不安自体が、ミソジニーが心の内に根を張っていることを意味する。というのも、更年期による変化はまったく普通のことであり病気ではないからだ。
私たちは、更年期を個人的な問題だとみなす姿勢を変えなければならない。妊娠と同じく、一部の人だけでなく多くの人に関係することなのだ。
イギリスの企業のなかには、更年期に配慮した対応をそれほど面倒だとは考えず、独自の方針を導入した例もある。
小売業のマークスアンドスペンサー(従業員の大部分が女性)では、管理職の裁量で従業員のために合理的な対応をとることを認め、従業員による取り組みを一般の人向けに紹介するミニ・ウェブサイトを立ち上げている。
ノース・リンカンシャーのカウンティ事務所[カウンティは県レベルに相当する行政区分]の幹部は、更年期は取り組む価値のある課題だと考え、オフィス内の服装規定をゆるやかにし、USB冷却ファンを支給している(8)。