「病を経て自分の弱さと向き合い、筋トレやサックスを少しずつでも続けることで、夢想的な完璧主義から抜け出し、等身大のちっぽけな自分を受け入れることができたんだと思います。」

今、読者の方が少し運動をしてみたいと思うのであれば、お勧めしたいのはやっぱり縄跳び。頭で考える自分の動きと、実際の動きの違いに驚かされるはずです。その差を埋めていくよう意識して回数を重ねていくと、思い通りに筋肉を動かせるようになるんです。

それから、どんな運動をするにもマウスピースをはめること。以前の僕みたいに顎に力が入りすぎないのでいいですよ。歯医者さんで作ってもらえますし、スポーツ用品店でも買えます。運動パフォーマンスが向上しますよ。

 

ちっぽけな自分を受け入れて

振り返ると、顎関節症の時が人生で一番つらかったのは間違いありません。何がつらかったかというと、自分の体調の悪さを認めることができずに、「助けて」という一言が言えなかったことでしょう。逆に、自分は毎日痛みに耐えて頑張っているのに……なんて思うから、他人に対しても厳しくなってしまいました。本当は自分が休みたいのに、マイペースな人を見ると、その裏返しの態度を取ってしまっていたんです。

若い頃は人気者というか、ある世代に対してカリスマを演じなければいけなくて、本来の自分を見失っていたんでしょうね。だけど、病を経て自分の弱さと向き合い、筋トレやサックスを少しずつでも続けることで、夢想的な完璧主義から抜け出し、等身大のちっぽけな自分を受け入れることができたんだと思います。

昔は常に「ベスト」を求めていたけれど、今は「ベター」を選んでもいいと思えるようになったというか。例えば以前なら「高級なブーツが欲しいけど、まだ今は買えない。それなら裸足のほうがマシ」と思っていたのですが、今は「裸足だと怪我してしまう。今日のところは自分の手の届く靴を履いておこう」と(笑)。「ベターを選ぶ」ことの大切さに気づけると人生は楽しく、同時に楽にもなりますよね。だからトレーニングに関しても、あまり自分を追い込みすぎないように意識しています。

今年は、NHK BSの連続ドラマに出演させていただき、来年の1月には4年ぶりに再演されるミュージカル『パレード』で新聞記者役をやります。アメリカ史上最悪の冤罪とも言われている事件を題材にした人間ドラマです。事件の背景には人種問題もあるのですが、その事件から100年以上経っても差別はなくならない。むしろ悪くなっている部分もあるでしょう。決して過去の話ではない、今の時代でも考えさせられる物語。ぜひ、劇場に足を運んでいただければと思います。

ただ、今はコロナの状況が落ち着くことを祈るばかりです。皆さんも不自由な生活を強いられて大変だと思いますが、たまにはトレーニングをして気分を変えてみてはどうでしょう。その時は、無理せず、完璧を求めすぎないで、自分に合ったペースを見つけてくださいね。