50周年記念コンサートツアーの最中、スタッフからケーキの差し入れが(伊藤蘭さんのインスタグラムより)

ところが、5年前、スタッフの方から「もう一度歌ってみませんか?」と声をかけていただきました。そうだ、今やっておかないと、年齢的にもこれがラストチャンスかもしれない。そう考えて、再び歌と向き合うことにしたのです。

とはいえ、歌手として活動するのは41年ぶり。しかも今回はスー(田中好子)さんもミキ(藤村美樹)さんもいない、ソロでの活動です。実際歌ってみると、「このままじゃダメだ」と思い知らされました。

ボイストレーニングにも通いましたが、いくら頑張っても追いつかず、いまだに冷や汗の連続です。でも、私が楽しまないと、聴いてくださるみなさんも楽しめないと思うので、自分をあまり追い詰めないようにしています。

19年に初めてソロコンサートを開催した時は、今の私をお客様が受け入れてくれるのだろうかと不安でした。そして、キャンディーズ時代の曲を歌うことにしても、私がひとりで歌って楽しんでもらえるのかしら、というためらいがあったのです。

でも、回を重ねるごとに、お客様が喜んでくださっている様子がひしひしと伝わってきて、本当に嬉しかった。

21年のコンサートツアー最終日には、キャンディーズが解散宣言をした日比谷野外大音楽堂のステージに立ちました。その時、野音の神様に「おかえり」って言っていただけた気がしたんです。解散当時は、まさかもう一度ここに戻ってこられるとは思ってもいませんでした。それだけに、このステージに立てた喜びは計り知れないものがあったのです。

おまけに、『紅白歌合戦』にも出場させていただくなんて。そんなこと1ミリも考えていなかったのに、こんな奇跡のようなことが現実に起きるのですね。

お芝居があり、家庭があり、そこに新たに歌が加わったことで、自分の世界が確実に広がっている。《心残り》をどこまで解消できるかわかりませんが、チャレンジして本当に良かったと思っています。