2024年上半期(1月~6月)に『婦人公論.jp』で大きな反響を得た記事から、今あらためて読み直したい1本をお届けします。(初公開日:2024年05月12日)******看護師として働く傍ら、月1で国内外の温泉旅行に行き、100湯以上の温泉に入浴してきた和田愛理さん。看護師×温泉ソムリエの視点で、心も体も元気になるおすすめの温泉をご紹介。今回は山形県にある肘折温泉について。1200年以上の歴史を持つ泉質と温泉街の魅力とは――
開湯から1200年の歴史を持つ最高の自噴温泉を楽しむ
東京駅から山形新幹線で3時間半、終着の新庄駅からバスで1時間弱。山あいの温泉街、肘折温泉が見えてくる。
秘湯ともいえるこのロケーション。温泉街を歩いていても、聞こえるのは川のせせらぎくらい。ここは都会の喧騒から切り離された、ザ・古き良き温泉街だ。肘折温泉は湯治場として、田植えや畑仕事がひと段落した時期の農家の休息の場として栄えてきた。現在もその「湯治場風情」を色濃く残しており、湯治としての長期滞在はもちろん、一泊や日帰りの短期間でも、その魅力を充分に楽しめる。
湯治場だったことから、温泉そのものの療養効果も非常に高い。肘折温泉の泉質はナトリウム―塩化物・炭酸水素塩泉で、切り傷や末梢循環障害、冷え性、胃腸病など、幅広い適応症がある。ここにきたら一度は入ってみてほしい温泉が、肘折温泉のシンボル、共同浴場「上の湯」だ。薄く緑がかった透明感のあるお湯が浴槽から絶え間なく溢れ続けている、贅沢な源泉掛け流し。塩化ナトリウムが多く含まれ、温まりやすいのが特徴。また、炭酸水素イオンの影響で、肌のツルツル感もしっかり感じられ、湯上がりも比較的さっぱりしている。シャワーなどはないため、備え付けの洗面器で掛け湯をして入るスタイルの、ローカル感あふれる浴場だ。
また、各旅館でも日帰り入浴を受け付けている場所があるので、是非立ち寄ってみてほしい。浴場によって引いている源泉の種類やブレンドの割合が異なるため、温度や肌触り、色や透明感などが大きく違ってくる。こうした湯めぐりを楽しめるのもここ肘折温泉の大きな魅力の一つだ。