厚生労働省が公表した「令和5年 人口動態統計月報年計(概数)」によると、2023年の出生数は72万7277人で、前年の77万759人より4万3482人も減少しました。このような状況のなか、「孫をどうこうする前に、20世紀型の子育てをしてきた私たちが意識を変えなくては始まらない」と語るのは、脳科学・AI研究者の黒川伊保子さん。今回は、黒川さんの著書『孫のトリセツ』から一部引用・再編集してお届けします。
動物界最大コスト、最大リスクの子育て
生殖本能が強く働く者たちは遺伝子セットの量産に励み、生殖本能に駆られない個体が子育てをフォローする。
竹内久美子先生は、これこそが、人類の生殖の仕組みであり、私たちが生殖期間を終えてなお生き続ける理由だとおっしゃった。
考えてみれば、人類の子育ては、動物界最大のコストとリスクを抱えている。
生まれて1年も自立自走できない動物なんて人類だけだ。
成熟して生殖が可能になり、縄張りを守り、餌を安定して獲得できるようになるまで、そこからまだ十数年はかかる。
そんな子育てを親たちだけでこなすには、人生コスト(時間、手間、意識、金)がかかりすぎるし、リスクが高すぎる。
人類の子育ては、大昔から、コミュニティの中で行われてきた。
いわゆる核家族のように、子育ての日々の手間のすべてが、親の手にゆだねられるようになったのは、近年のことである。