女性たちの奮闘

彼女の父は参議藤原元輔と考えられます。その場合、祖父は顕忠であり、なんと村上天皇(一条天皇の祖父)の時代の右大臣でした。

顕忠は菅原道真を失脚に追い込んだ左大臣藤原時平の次男で、時平の子の中で唯一長生きをした人ですが、政界は時平の弟、忠平の子供達に牛耳られるようになり、その子孫は衰退していきます。

その中で元輔の娘は上級貴族の娘でありながら、皇后付きの女房の道を選び、華やかな定子サロンの主要キャラクターになっていったようです。

力を失いつつある家をあてにできない姫たちが、自分の親の身分や才覚を生かして、有力なバックを持つ姫のもとで働くーー。

そういった女性たちの奮闘は、すでに清少納言の時代から見られていたのです。

【関連記事】
『源氏物語』最大のナゾ。なぜ藤原氏全盛期に<源氏>?なぜ源頼朝らが傾倒した痕跡はない?日本史学者「広まったきっかけは室町幕府・足利義満で…」
マンガ『源氏物語』9話【若紫】帝の妻・藤壺の宮の幼い姪に執心する一方、妻・葵の上からは冷たくあしらわれる源氏。「私にはあの人しか」思いつめた源氏はついに藤壺邸へ!
下重暁子 藤原道長からいじめ抜かれた定子を清少納言は懸命に守ったが…紫式部が日記に<清少納言の悪口>を書き連ねた理由を考える

謎の平安前期―桓武天皇から『源氏物語』誕生までの200年』(著:榎村寛之/中公新書)

平安遷都(794年)に始まる200年は激変の時代だった。律令国家は大きな政府から小さな政府へと変わり、豊かになった。その富はどこへ行ったのか? 奈良時代宮廷を支えた女官たちはどこへ行ったのか? 新しく生まれた摂関家とはなにか? 桓武天皇・在原業平・菅原道真・藤原基経らの超個性的メンバー、斎宮女御・中宮定子・紫式部ら綺羅星の女性たちが織り成すドラマとは? 「この国のかたち」を決めた平安前期のすべてが明かされる。