(写真提供:Photo AC)
2024年のNHK大河ドラマ『光る君へ』で注目を集める平安時代。主人公の紫式部のライバルであり、同時代に才能を発揮した作家、清少納言はどんな女性だったのでしょうか。「私は紫式部より清少納言のほうが断然好き」と公言してはばからない作家、下重暁子氏が、「枕草子」の魅力をわかりやすく解説します。縮こまらず、何事も面白がりながら、しかし一人の個として意見を持つ。清少納言の人間的魅力とその生き方は、現代の私たちに多くのことを教えてくれます。

最後の一人になっても離れないと誓った、定子への想い

清少納言が仕えた中宮・定子との絆がさらに深くなったのは、皮肉にも、道長からのいじめともとれる行動が如実になったことがきっかけでもあった。

道長は娘彰子を十二歳とまだ少女のうちに入内させ、天皇にはいくら定子を愛しているといっても、権力を握る道長に反抗する力はなく、ここに、一条天皇をめぐって二人の后が並立するという珍事が実現したのである。

定子を皇后と呼び、彰子は中宮になる。これを見て、清少納言の定子への思いはますますつのる。

「枕草子」(第二百二十三段)にも書かれているように、最後の一人になっても決して定子のそばを離れまいと決心して、四ヵ月の休みの後定子の元へもどる。

それを定子は、とがめるでもなく、ユーモアを交えて迎え、ほっとした清少納言もそれまでと同様、いやそれ以上に懸命に宮仕えにはげんだ。もはや定子を守ることだけがつとめであり、道長方からの様々ないじめや政変を書き残すことが使命となったのである。

ところが、うち続く身のまわりの悲劇にたえかね、一条天皇の愛情だけを頼りに、一年ごとにたて続けに子供をみごもった肉体的な負担も追い討ちをかけたのか、定子は二人目の皇女の生誕を待つように亡くなってしまった。

二十四歳という若さであった。