遠回りして気づいた自分らしさ

その後、1年くらいはまったく仕事がありませんでした。オーディションを受けてもさっぱり受からない。でも僕は「適当」という言葉が好きなんです。目標や課題がある時には全力で一生懸命やるけれども、オフの時は頑張らず、適当でいることが大事かなと思っているから。それでせめて自分の好きなことをやろうと思って、服飾の専門学校に入りました。

そんな生活が続いたある時、髪形を変えたら、急にオーディションに受かるようになったんです。アルバイト先に、髪が耳にかからないようにと言われて、初めて行く美容室で切ってもらったら、おかっぱにされただけなんですけどね。でも、自分で見ても似合っていた。

思い返すと、オーディションに受からなかった時期は、自分の何がダメなんだろうということばかり考えていました。どんな髪形をして何を着てどう受け答えすれば気に入られるんだろうと。就活みたいですよね。

でも、自分に似合うヘアスタイルを見つけた途端、合格するようになった。だからそれからは、「自分はこういう人間です。役と合っていたら選んでください」という気持ちでオーディションに臨むようになりました。

演じる時には、「僕を好きなように料理してください」とスタッフの皆さんにお任せして。坂口涼太郎というコンテンツの幅を楽しんでもらえたらと、今は思っているんです。

俳優以外のお仕事でも、「どうぞ僕をお楽しみください」という気持ちを大切にしています。テレビや雑誌のきらびやかな感じが好きなので、せっかく人様の前に出るなら、素敵なファッションやメイクにしたい。自分なりの〈美しさ〉を表現して、「僕を見て!」という「どやさ!」の精神でいきたいんです。

後編につづく