嵐のようにやってきた人物
そして最後に背の高くて若い兄ちゃん、その場のものを動かすなという謎指定をしてきたFさんが到着しました。
「これ、動かしてないですよね!?」
「え、は、はい……たぶん」
なんで事件現場でもないのにそんな……? もしかしてきみは覆面税務署員とか覆面捜査員とかだったりする? 我々身内が知らないうちにこの空き家がなんらかの現場になってたり、する?
「何だろうあの人」
「写真に大麻でも写ってたかな」
思わずヒソヒソ声になる私と母。
しかし何度見ても窓際と縁側にあったのは枯れて死の大地と化していたカピカピのプランターとサボテンしかない。大麻どころか生命が育つ要素がなにひとつないが!
「いいですか、ここ一式、ぜんぶ貰います。いまから運び出すので触らないでください!」
謎の兄ちゃんは嵐のようにやってきて、その場を仕切り始めたのだった。