孤独を愛する生きもの
仏門に生きる私のような僧侶にとって、ネコさんは特別な存在です。
かつて唐(とう)などと呼ばれた中国からありがたい仏教の経典が船で運ばれる際、ネズミから護(まも)ったのがネコさんだったとか。ネコさんがいなければ、日本に仏教は根付かなかったかもしれへんのに、当のネコさんは 〝偉大な功績〟などどこ吹く風。誰にも媚びず、へつらわず、ひょうひょうと日々を生き抜き、命をつないできました。
いつしか「孤独を愛する生き物」と目されるようになった、ネコさん。
でも、果たして本当にそうでしょうか?
ネコさんは、ほんまに孤独を愛してるんでしょうか?
我が家の弥太郎(やたろう)は、10年前、保護ネコの里親サイトから迎えた子です。
できるだけ緊急性の高いネコさんを引き取りたいと、パソコン画面に目を凝らしていた時、突然、直感が降りてきたんです。「この子や!!」って。
まんまる目にまんまる顔の茶トラ男子は、まだ10ヶ月。あまりにも可愛くていっぺんに気に入った私は、翌日、すぐに飼い主さん一家に会いに行きました。
ご夫婦とお子さんふたりのご家族で、残念ながら、上の子にネコアレルギーが出てしまったとのこと。
トントン拍子(びょうし)で引き取りが決まり、最後は一家で記念写真を撮って、わりとアッサリ別れを告げておられました。「バイバーイ」って。
アッサリいかなかったのは、弥太郎のほうでした。
キャリーバッグに入れられ、住み慣れた家から出る瞬間に発した「ぎゃああああああああああああああ」という悲痛な鳴き声は、今でも忘れられません。
つらかったんやろなあ、弥太郎。