イラスト:おおの麻里
更年期は、さまざまな不調に悩まされる時期です。東洋医学の視点からその原因を探り、薬膳の理論をもとにした食事と、古くから伝わる呼吸法による改善策を伝授します(構成=天田泉 取材・文=佐藤ゆかり イラスト=おおの麻里)

不調の原因は血の滞りやエネルギー不足など

疲れ、冷え、頭痛、不眠、腰痛、肩こり、むくみ、イライラ……。これといった原因は思い当たらないのに、調子が悪い。漢方薬剤師の川手鮎子さんは、更年期世代のそんな悩みに、漢方や中医学の視点から長年にわたり応えてきました。

「西洋医学は、更年期の不調の原因を女性ホルモン・エストロゲンの減少や、老化、ストレスによる自律神経の乱れと捉え、『ストレスを解消して自律神経を整える』ことで対処します。しかし、私の漢方薬局には、セルフケアでは思うように症状が改善しないことに悩んで来られる方が多い。そこで東洋医学の教えをお伝えしています」(川手さん。以下同)

東洋医学では、不定愁訴は人間の体を構成する気(き)・血(けつ)・水(すい)のバランスが乱れることで起きると考えます。

「気とは、生命エネルギーのこと。血は全身に栄養と酸素を運ぶ血液、水は体液・リンパ液・水など血液以外の水分を指します」

車にたとえると、気はエンジン、血はガソリン、水はエンジンオイル。どれが欠けても車は走れません。

「気・血・水のどれかが不足したり滞ったりすると、さまざまな不調が表れます。特に重要なのは、エンジンに当たる気です。血や水を全身に運ぶ役割を担う気が不足すると、巡りが悪くなってしまうのです」

東洋医学では、気が不足した状態を“気虚(ききょ)”、気の巡りが悪くなった状態を“気滞(きたい)”、血が不足した状態を“血虚(けつきょ)”、血が滞った状態を“瘀血(おけつ)”、水が滞った状態を“水毒(すいどく)”と呼びます。

「気虚になると疲れやだるさ、免疫力の低下による不調などが起こります。血虚は不眠や、些細なことで動悸がするなど精神的な症状が表れる。上半身で血の巡りが滞ると肩こりや腰痛、下半身で悪くなると足の静脈瘤や痔などを引き起こし、水毒になると、むくみなどの症状が生じやすくなるのです。また、頭痛やめまいは、気滞をはじめ、どのタイプでも起こります」