メディアが煽るフードファディズム
また、フードファディズムは、栄養教育(食育)の邪魔をします。
食事バランスガイドを参考にしながら、バランスよく食べる練習をしているところに、「あの食べものはダメ、この食べ物はよい」などの余計な情報が入ってくることになります。『糖質制限食』もその代表だと筆者は考えています。
そして高橋は、学校などで指導的立場にいる人が、マスコミの影響を受けて、「給食だより」などにネタとして誤った情報を書いてしまったりすると、その情報が書き手を通して信頼できるものに格上げされてしまうので、指導者は特に注意深く情報を扱うよう警鐘を鳴らしています。
以上のことから、メディアにもコンプライアンスが求められますが、メディアだけが悪いのではなく、「これさえ食べれば健康が得られる」「これを食べると元気になる」ものを教えてほしいといったような、消費者一人ひとりの思いにつけ込まれていると考えるべきでしょう。
不安を煽る番組や書籍は売れるので、資本主義に則ってビジネス界は扱うのです。
そこそこの健康を考えて、ほどほどに食べるというような情報にはあまりニーズがないのです。ビジネス界はニーズのあるところに資本を投下していきます。
高橋のまとめとしては、「食生活がとても難しい時代になったように感じるが、実際は、ご飯と味噌汁とおかずという食生活を続けていれば、それほど難しく考えることはない。旬のものを食卓にふんだんに取り入れて、あまり余計なことを心配しなくていいという意識を持ってもらうための取り組みが大事なのではないか」としています。
消費者が栄養学を勉強して、メディアリテラシーを持つことが重要ということでしょう。
※本稿は、『一般教養としてのサプリメント学』(草思社)の一部を再編集したものです。
『一般教養としてのサプリメント学』(著:杉浦克己/草思社)
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