池江璃花子『もう一度、泳ぐ。』(文藝春秋)より
女子競泳で活躍する池江璃花子選手は、2020年の東京五輪を目指していた18歳の時、急性リンパ性白血病と診断された。「絶望しかなかった」という状況だったにもかかわらず、不屈の精神で復活。“パリ五輪に出場する”という目標を掲げ、4年間闘い続けた。先日行われたパリ五輪では、惜しくも100メートルバタフライで準決勝敗退。リレー2種目(混合4×100メートルメドレーリレー、女子4×100メートルメドレーリレー)もメダルには届かなかったが、現在は2028年ロサンゼルス五輪へ向けての意気込みを表明し、歩み続けている。そんな彼女の4年間を記した初めての著書『もう一度、泳ぐ。』が刊行に。今回は、退院して1年を迎えた頃、2020年に綴られた記録を紹介する。

“一緒にパリ五輪に行きたい”

リオ五輪の400mリレーに一緒に出場した松本弥生さんと食事する機会がありました。

弥生さんとは10歳も離れていますが、可愛がってもらっています。

2年前、弥生さんが2年ぶりに競技復帰する時には、私に初めて相談してくれ、弥生さんもそんな気持ちで頑張るなら、私も4継で決勝に残ってメダルを獲るという目標を掲げて頑張ろう、という気持ちにさせてもらったんです。

そして自分も100m自由形の女子を強くするために引っ張っていかなくちゃいけないと思いました。

その直後に病気が判明し、目標は変わってしまいましたが、この日は弥生さんに「一緒にパリ五輪に行きたいから、そこまで頑張って」と伝えました。

弥生さんは、東京五輪に私と一緒に出たいようでしたが、五輪に出るのは簡単ではありません。私も段階を踏んでいかないとなりません。