いわゆる「コップの中の嵐」
民主主義を選択した現在、日本政府は国民に対して責任を持ちます。国民の生活を良いものにしなければ、選挙を通じて、政府のありようは否定される。
ですから、政治家は民衆に向き合わねばならない。たとえそれが選挙の時だけだったり、表面的なものにすぎなかったりしても。
翻って、平安時代の朝廷は民主主義ではない。そのうえ、外国が攻めてこなければ、強い軍隊もいらないのですから、結果として、政が民の生活を豊かに保つという方向にも向きにくくなります。
とすると、行政の質は考えなくていいし、才能を自身の存在理由とする官僚も不要です。天皇を守る盾としては、世襲の貴族がいれば十分。ちなみに世襲のメリットとは、「裏切り者」がでにくいということ。
地位を上げたいがために、政争は常に生じます。でも庶民に比べると、それは「恵まれた者」と「恵まれた者」との抗争、いわゆる「コップの中の嵐」に過ぎず、社会にパラダイムシフトを引き起こすようなものには到底なりえないのです。
整理すれば、生存をかけるような厳しい争いがない。それが平安時代の貴族社会でした。彼らは総人口1000万人のうちのわずか500人にすぎず、自分たちが豊かに暮らせればそれでよかった。
実際に史実を追っても、彼ら平安貴族の中からは「民衆を豊かにすることで、自分たちのもとに収められる税を安定して増大させる」といった初歩的なアイデアすら、ほとんど生まれていなかったようです。
ですので、民主主義の世界にいる私たちが「政治とは民を豊かにするものではないのか!」とか「貴族なんだから、もう少し政治に身を入れたらどうか!」といった批判をするのは、お門違い。
ステーキ屋さんで蕎麦を注文するような行為である、ということになるでしょう。
開催決定!《歴史探訪》本郷和人先生が同行!平安貴族ゆかりの京都2日間
本連載で解説を務める本郷先生の解説の元で歴史の舞台を巡るツアー企画。好評につき、徳川編、武田編に続く第3弾【平安貴族編】の開催が決定いたしました!
●単に観光地を巡るツアーとは違い「歴史」の知識を深める、大人の為の学び旅です。
●歴史学者・東京大学史料編纂所教授 本郷和人先生が同行!現地を実際に見ながら、詳しい説明を聞き、質問し、歴史のダイナミズムを自ら体感することができます。
●今年の話題! 紫式部ら平安貴族ゆかりの京都を2日間かけて巡ります!また在原業平と菅原道真が活躍する『応天の門』(灰原薬/新潮社)を監修している本郷先生ならではの、ここだけの話も!?
・華やかな藤原摂関時代をしのぶことのできる世界遺産「平等院」
・紫式部が「源氏物語」の着想を得たとされる「石山寺」
・平安遷都1100年を記念して創建!桓武天皇と孝明天皇を祀る「平安神宮」
・歴代天皇の居所「京都御所」
・菅原道真公をお祀りした神社の宗祀「北野天満宮」
2日目昼食後には本郷先生との懇談会のお時間もご用意!
離れていても案内が聞こえるイヤホンガイド付きで「密」回避!
ご宿泊は京都市内の好立地なホテルへ!
*詳しくは読売旅行のサイトでご確認ください。