そんなわけで、田辺さんがお書きになった吉屋信子の本が世に出るとすぐに読破し、すばらしいお仕事だと感服。冒頭、足尾銅山の鉱毒事件と闘った田中正造についてかなり詳しく描かれるなど、当時の社会情勢もよくわかります。
ちなみにこの作品の連載を始めたのは、田辺さんが65歳のときだったそう。5年かけて1000ページを超える大著を完成させました。
私は一時期、化粧品メーカーのエイボンが社会のために有意義な活動をしている女性に贈る「エイボン女性年度賞」の選考委員を務めていました。1998年、田辺聖子さんにエイボン女性大賞を差し上げることができたことを、たいへん光栄に思っています。
昨年、中央公論新社から『ゆめはるか吉屋信子』(中公文庫・全3巻)が復刊されました。読み直してみたのですが、明治・大正・昭和と生き抜いた先進的な女性の人生がイキイキと描かれており、ゴシップを含め、文壇模様も面白い。
解説は、上野千鶴子さんが書いておられます。田辺聖子さんという作家を深く知るうえでもおすすめの本です。機会があれば、手にとってみてはいかがでしょう。