(イラスト=マツモトヨーコ)
(イラスト=マツモトヨーコ)

いつの時代も女は女にやさしく――

結果的に実現はしませんでしたが、実は私も、吉屋信子について書いてみたいと考えていた時期がありました。

もともと吉屋信子の作品が好きだったし、婦人運動家で国会議員としても活躍した市川房枝さんが「吉屋信子は婦人参政権に理解があった」とNHKラジオで語っていたのを耳にし、興味を抱いたのです。

吉屋信子について調べるうちに、私が若いころに抱いていた印象はがらりと変わりました。昔は、いかにも《女学生の友》めいた、ちょっとなよなよしたイメージでとらえていたのです。ところが実際は、あらゆる困難に立ち向かう勇気と胆力を持ち合わせている、骨太な方でした。

同性愛者だったこともあって、吉屋信子が常々口にしていた「女の友情」が曲解されていた向きもあります。彼女は自分の性的指向とは関係なく、男社会のなかで女性が自分らしく生きるには、女性どうしで支え合わなくてはいけないと考えていたようです。

「いつの時代も、女は女にやさしくあらねばならない」という吉屋信子の言葉は、私の心に深く染み入りました。実際私も、多くの女性の先輩方に支えられてきたおかげで、仕事を続けることができたのですから。