NPO法人「高齢社会をよくする女性の会」理事長の樋口恵子さん
(撮影:婦人公論.jp編集部)
NPO法人「高齢社会をよくする女性の会」理事長の樋口恵子さんによる『婦人公論』の新連載「老いの実況中継」。92歳、徒然なるままに「今」を綴ります。第17回は、【選挙権のない時代に生まれて】です。(構成=篠藤ゆり イラスト=マツモトヨーコ)

尊敬する先輩の一人、三淵嘉子さん

法曹界で活躍した女性をモデルにした、NHK連続テレビ小説『虎に翼』が、注目を集めているようですね。

そのモデルとは、日本初の女性弁護士の一人であり、戦後は日本初の女性裁判所長となった三淵嘉子さん。1914(大正3)年生まれですから、私より18歳上です。明治大学の女子部法科で学ぶ前は、東京女子高等師範学校の附属高等女学校(現・お茶の水女子大学附属中・高)に通っていたので、私にとっては学校の先輩でもあります。

直接面識はありませんでしたが、女性の社会進出のために尽力した女性たちの「長い列」の前のほうを歩いていた方なので、心から尊敬していました。

私が東京女子高等師範学校の附属高等女学校を受験したのは1945年、敗戦の年です。私と、小学校からの親友の2人は、入試成績がよかったにもかかわらず落とされそうになりました。理由は、2人とも結核で休学したことがあるから。

全快とお医者様も保証してくださっているのに、病歴による差別を受けそうになったのです。結局、職員会議のような場である方が異議を唱えてくださったとかで、入学が許されました。

入試差別といえば、2018年には10大学の医学部入試で女子受験者を不利に扱う得点操作がされていたことが明るみに出て、問題となりました。その際、「妊娠や出産、育児があるから女性医師数の抑制は必要悪だ」などと述べた医療関係者もいて、これが21世紀の日本の姿なのかと愕然としました。