家には2人の主人はいらない

それにしても、戦前の民法はひどいものでした。ドラマの2回目で、結婚すると女性は「無能力者」となると民法に規定されていることを知り、主人公は衝撃を受けます。きっとドラマを見ていた方も、ビックリされたのではないでしょうか。

明治民法における無能力者とは、「行為能力が制限された者」の意味だそうです。妻は不動産売買や訴訟などの法的行為を夫の許可なく起こせず、離婚したくても離婚できなかったのです。財産も夫に管理されていたし、夫の許可なく働くこともできませんでした。

明治民法制定に関わり、民法の父とも呼ばれた法学者・梅謙次郎は、「天に2つの太陽がなく、国に2人の王がいないように、家には2人の主人、つまり戸主はいらない」と言ったとか。100年前の日本は、そんな社会でした。

新憲法や新しい民法が作られても、社会はそう簡単には変わりません。でも婦人運動家をはじめ多くの人たちの尽力のおかげで、少しずつではありますが、日本社会は変わっていきました。三淵嘉子さんも、道を切り開いたお一人でした。

朝ドラ『虎に翼』がこれだけ多くの視聴者に支持されているのは、今の私たちが生きている世の中が、100年前と地続きだと感じさせてくれるからではないでしょうか。だから観た人それぞれの心になにかが突きささり、改めて今の女性のありようを考えたくなります。

まだまだ日本は変わらなくてはいけないし、そのために老いも若きも手をたずさえて、がんばらねば――。

そんなわけで私はヨタヘロしながら、赤松良子さんがいつもおっしゃっていた「霞が関のビルの中に、いまだに家父長制が居座っている!」というセリフを思い出し、今も気炎を上げている次第です。