幸四郎さんの歌舞伎での芸域は広く、『桜姫東文章』の桜姫、『東海道四谷怪談』のお岩、そして『鏡獅子』まで踊っている。

まだこれから演じてみたい大役は?

――高麗屋の家の芸として『関の扉』(『積恋雪関扉(つもるこいゆきのせきのと)』)の関兵衛(実は大伴黒主)や『大森彦七』、『ひらかな盛衰記』「逆櫓(さかろ)」の樋口など、まだやってないものが結構ありますね。

先日の7月歌舞伎座の『裏表太閤記』は、二代目(市川)猿翁のおじさまが昼夜通しの芝居を作って明治座に掛けられた芝居ですけれども、これは本当に古典の演出なので、そのエネルギーはすごいと思いました。

今回はそれを半分の時間にしましたけど、決してダイジェストということではなくて、僕は豊臣秀吉と、織田方の鈴木喜多頭重成と、もう一つ『西遊記』の踊りの場面があって、その孫悟空の三役です。

そして8月にはやはり歌舞伎座で、京極夏彦さんのお書きになった『狐花葉不見冥府路行(きつねばなはもみずにあのよのみちゆき)』という新作。

それから年末には、新橋演舞場で以前、劇団☆新感線で上演した『朧(おぼろ)の森に棲む鬼』を、いのうえひでのりさんの演出で上演します。

歌舞伎NEXTという、いわゆるスーパー歌舞伎のようなジャンルの芝居で、今回は僕と尾上松也君とが主役のライと、サダミツという二役をダブルキャストで演じますし、ほかにも新・(中村)時蔵君とか尾上右近君とか坂東彌十郎さん、坂東新悟君親子も出ます。

僕のところの染五郎も出させてもらいますけど、こういう若い世代のメンバーがぎゅっと集まって、悪に染まり切った男の話なので、そのものすごいエネルギーを発散させる舞台になるだろうと思いますね。今から体力と気力を備えておかないと。

 

美少年の誉れが高かった染五郎さんも、いよいよ美青年、美男役者として注目されて。

――若いということはすごい武器ですね。つくづく脅威を感じますよ。

 

でもまたずっと上の世代の名優たちは、芸盛り、男盛りの幸四郎さんに脅威を感じておられますね。

――そうかなぁ(笑)。真ん中の世代として頑張ります。