「会場では、オーディションと言われつつも《これは舞台だ》と自分に言い聞かせて」

オーディションで、翼和希オンステージ!

劇団の大先輩・笠置シヅ子さんをモデルにした朝ドラが始まると聞いた時は、大興奮しました。しかも創立101年という新たなスタートの年に放映されるとは、なんて素敵なご縁なんだろう。どうにかして自分も関わらなきゃ、と強く思ったのです。

ところが、劇団が私の応募書類を出してくれたのは、なんとヒロインオーディション。笠置さんは小柄で華奢な方と伺っていましたから、ガタイのいい男役の私が受かるとは思えない。でも、何かチョイ役でもいただけるように爪痕だけは残したい。その気合のもと、バッチバチのスーツに、地下鉄の風にもなびかないほど固めたリーゼントで挑みました。

会場では、オーディションと言われつつも「これは舞台だ」と自分に言い聞かせて。歌の審査では、課題曲である笠置さんの「ヘイヘイブギ」を審査する方と「ヘーイヘイ」「ヘーイヘイ」とコール&レスポンスしながら、思い切り調子に乗って歌い上げました。

まあ、スタッフの皆さんも笑ってくださったし、翼和希オンステージとしてはやれることはやったからと思っていたら、なんと初代男役トップスターにして熱血漢の教育係、という素晴らしいお役をいただくことができました。

舞台の人間は演技が誇張的だから、映像のお仕事は苦労すると聞いていましたが、テレビは細かいお芝居を繊細に映してくれることが魅力だと思います。舞台では5つのことがやりたくても、2つくらいに絞らないと何をしたいか伝わりません。でもテレビは心情の変化を、ちょっとした表情や動きで表現すれば伝わることが面白かったです。