「残念ながらご落選になりました」は合っているのか?
「懸賞に外れた。なぜ当選は〈ご当選〉で落選は〈落選〉なの」何とも悔しさがにじむこの意見、どう思いますか。
「落選」と書かれた通知を受け取ったこの人は、見出しのようにせめて「ご落選」と書いてほしかったそうです。
人の感覚は、まさに十人十色。
落選したから丁寧な言葉でいたわってほしい人もいれば、そっとしておいてほしい人もいますよね。
個々の表現は自由なので好きなように使ってもかまわないと言いたいところですが、それでは身も蓋もなくなります。
一応の基準を示すと、当たった場合は「ご当選」、外れた場合は「落選」を使います。
一般的に、「落選」「倒産」「退学」など良くない意味を持つ語では、「お/ご」や「お/ご……になる」を付けたナル敬語は作りにくいとされているのです。
試しに、無理やり「ご落選」「ご落選なさった」と盛ってみてください。
「ご倒産になったそうよ」「ご倒産なさったんですね」「ご倒産になったのですか」なども、いたわりを通り越して、茶化した感じになってしまうはず。
直接言おうものなら、けんかになってしまうかもしれません。
※本稿は『その敬語、盛りすぎです!』(青春出版社)の一部を再編集したものです。
『その敬語、盛りすぎです!』(著:前田めぐる/青春出版社)
「頑張らせていただきます」「お名前様、いただけますか」「書類のほうをお送りします」…丁寧に言おうとして、おかしな日本語になっていませんか?
見られ方を気にして、つい「盛りすぎ・へりくだりすぎ・失礼すぎ・流されすぎ」になってしまう「盛りすぎ敬語」。京都暮らしのコピーライターが、その違和感の正体を楽しく解き明かしながら、潔くも心地よい言い換えを提案します。